ガンマナイフ治療について
ガンマナイフ治療とは
ガンマナイフは、ガンマ線を放出する192個のコバルト60を半球状に配置することで、病変部にガンマ線を集中させて治療する高精度放射線治療装置です。70年以上前にスウェーデンで開発され、脳腫瘍や脳動静脈奇形など脳の疾患に有効な治療法で、2021年末現在までに、全世界で150万人以上の方が治療が行われてきました。ガンマナイフは0.1mm単位の位置精度で照射が可能な高精度放射線治療です。現存するどの放射線治療装置よりも高い治療精度を有する治療装置で、世界中に普及し、高い評価を得ています。ガンマナイフ単独治療だけでなく、手術後の残存病変にも有効で、開頭による脳神経外科手術を変革しつつあります。また、脳ドックなどの脳検査機器の普及に伴い、発見された無症状の早期の脳病変をガンマナイフで治療する事も可能となっております。ガンマナイフ治療の専門施設である当クリニックは開設以来19年でおよそ14,500件の治療を行っております。的確な診断のもと迅速な対応が可能で、患者さまには安心して治療をお受けいただくことができます。治療に関しましてはセカンドオピニオンを取り入れ、インフォームドコンセントを重視し主治医が納得いくまでご説明をいたします。また入院施設は基本個室で管理されており、プライバシ-を保護するとともに快適な療養環境を提供いたします。当クリニックは患者さまの立場に立ち信頼され暖かみのある医療を目指しており、患者さまの病気が治癒し、心が癒やされるクリニックとしてご利用いただければ幸いです。
築地脳ガンマナイフ 理事長 平井達夫
院 長 芹澤 徹
ガンマナイフ治療は、通常の開頭手術や放射線治療に比べ、体への負担が少なく、かつ通常2泊3日という短期間の入院で治療が可能です(ただし、症状によっては入院が数日のびる場合があります)。その上、治療による副作用も少ないことが特徴です。さらに、病巣が小さければ手術療法を凌駕する成績が期待できます(切らずに病気を治し、早期に社会復帰が可能です)。医療費は通常総額で60万円程度です(全額保険適応ですので、一時立替金は目安として本人ですと3割負担で20万円程度です。もちろん高額医療費の還付が受けられます)。なおこれに個室料金が別途必要となります。
本文は、これから築地神経科クリニック・東京ガンマユニットセンターでガンマナイフ治療を受けられる患者さまに、ガンマナイフの原理、効果、副作用、また、治療の手順を理解して頂くものです。
ガンマナイフ治療の有効性
治療可能な対象疾患においては、80~90%以上の有効性が認められ病変を制御します。数ミリから3cm程度までの病変は安全で有効な治療が可能です。3cm以上の病変にはガンマナイフを用いて分割照射、あるいは他院でのリニアックによる定位放射線治療をお勧めします。

■ガンマナイフの正確性:192個の非常にシャ-プなガンマ線ビ-ムを病変部の1点に集中。誤差は0.1mmと計測されております。このため健全な脳への影響は最小限にとどめられます。
対象疾患
- 脳血管障害:脳動静脈奇形、海綿状血管腫、その他
- 脳腫瘍:髄膜腫、聴神経腫瘍、下垂体神経内分泌腫瘍、頭蓋咽頭腫、脊索腫瘍 、脳転移(癌)、神経膠腫、その他
- 機能的疾患:三叉神経痛
ガンマナイフの原理
放射線の一種であるガンマ線を病巣に集中的にあて破壊します。病巣の周辺の正常な脳にあたる放射線は少ないため、放射線の影響が最小限に抑えられます。特に、手術が危険な部位の治療に効果を発揮します。さらに、全身合併症のために手術の危険度が高い人や高齢の方でも、体にかかる負担が少ないため安全に治療できます。

原理は、192個のコバルト線源からでる細いガンマ線が機械の中心に集まるように設計されています。機械的誤差は0.1mm以下です。この機械の中心には192本の細いガンマ線が集中する結果、その焦点には極めて大量のガンマ線があたり、中心から少し離れた部分にはほとんどあたりません。
これは、ちょうど虫めがねで太陽の光を一点に集めると、焦点では紙が焼けるほど熱くなりますが、焦点から離れたところではほとんど熱をもたないのと同じ原理です。
したがって病巣が小さくなければガンマナイフで治療できません。原則として、病巣の最大径が2.5~3cm以下であることが必要です。
このガンマ線が集中的に集まる放射線の焦点に、病巣を正確に一致させ治療を行います。このため、位置を決める時にまた、放射線を照射している間に動かないようにするため、フレームを頭蓋骨にピンで固定します。この際、適切な鎮静・鎮痛剤を使用しますので、ほとんど痛みを感じません。
そして、このフレームを基礎にして座標を決め、MRI・CT・脳血管撮影を用いて病巣の広がりを3次元的に把握します。この病巣の広がりに放射線を正確に一致させ、可能な限り大量にあて、周囲の正常組織には被ばくが少なくなるように、コンピューターで計算します(治療計画)。特に、視神経・脳幹といった放射線に弱い組織を保護するため、これらの組織を通るガンマ線を遮蔽したり、放射線の入射角度を変えることができます。このような技術も併用し、正常な組織の放射線障害を最小限にすることができます。
治療の手順
1.フレーム装着
2階手術室で局所麻酔を用いてフレームを頭にピンで固定します。当クリニックでは深い鎮静鎮痛下にフレームを装着しますので、ほとんど無痛です。通常約10分で終了します。
2.MRI(必要に応じてCT)を撮影
脳動静脈奇形の場合、MRIのほかに、通常脳血管撮影も行います。(脳血管撮影時、大腿付け根の動脈を穿刺しますので、検査終了後6時間程度ベッド上での安静が必要になります)。
3.病室で待機
MRIを撮影後、病室で待機していただきます。その間、治療担当医がコンピューターを用いて治療計画を行います。通常1時間程度で治療計画が終了し、準備が整った時点でガンマナイフ治療室に呼ばれます。照射開始時間はその日の治療状況により異なります。待機時間、照射開始時間、治療時間の予定を決まり次第お伝えするようにいたします。
4.照射
頭を機械にセットし通常1回、機械の中に入ります。治療室での照射は普通1-3時間ぐらいかかります。この間音楽を聴きながらリラックスしてお過ごしいただきます。治療中は痛みはありません。
放射線治療中(照射)

モデル(Perfexion TM)
5.治療終了後
照射が終了したらフレームをはずし治療は終了です。消毒後、包帯を巻いて病室に戻ります。その後、頭がジンジンと痛みます。これは放射線をあてたことによるものではなく、頭を締め付けていたフレームをはずしたためおこるものです。痛み止めを用意してありますので内服してお休みください。この痛みは1 時間程度でおさまります。治療終了後は問題なければ歩行できます。また食事や水分もとれます。創部は消毒不要です。退院時にお渡しする絆創膏を3日間貼りかえてください。治療翌日から傷がぬれないようにすれば、シャワー・入浴は可能です。ピンを刺した部分の傷が乾燥する治療後 2-3 日目には、洗髪も可能です。外来での通院は紹介先の病院の指示通り継続して下さい。当クリニックでも原則として、 1-6 か月毎に外来通院していただきます(通院の間隔は疾患や患者さまの状態・状況により異なります)。急変時には原則として、主治医である地元の紹介先の先生にまずご相談ください。
各対象疾患への治療の実際
1.各がん腫からの脳転移
当クリニックの治療スタッフには総計14,500例のガンマナイフ治療の経験があります。病巣に十分な放射線を照射すれば(20グレイ)、ガンマナイフ治療後腫瘍が縮小しその状態を保つ(制御)ことができる確率は一般に80%以上です。ガンマナイフは最小限の体への負担で、従来の手術や放射線療法を凌駕する効果があるという点で画期的です。腫瘍の大きさは2.5~3cmが治療の限界で、できれば2cm以下が理想的です。片麻痺や言語障害などの神経症状がある場合も、腫瘍の縮小に伴い症状の改善が期待できます。しかし、20%の方は数か月後に、再発したり、放射線による副作用が出現したりするなど無効の方がいます。治療効果には個人差があり、原発がんの種類、脳転移の大きさ、部位、個数、以前の脳に対する放射線治療歴などにより異なります。
また多発病変(ただし、10個以下が最適です)でも、各種治療後(全脳照射後、手術後、ガンマナイフ治療後)の病巣でも、新たに出現した病巣でも治療可能です。3cm以上の腫瘍があっても、内部に内容液がたまっている(嚢胞形成)例では、小さな手術で内容液を抜いてからガンマナイフ治療を行う方法があります。また3cm以上の腫瘍は開頭腫瘍摘出術が必要ですが、状況に応じて、1回で低い線量での照射(こそく的照射)、あるいは分割照射を行ないます。分割を行うことで、大きな腫瘍でも安全に、かつより強い放射線を照射することが可能になります(低分割定位的放射線治療といいます)。
以前は脳転移=死を意味していましたが、ガンマナイフ治療の出現によって、腫瘍個数が10個以下であれば、ほとんどの方(80-90%以上)で脳の転移を制御できる時代がきました。初回治療後、数ヶ月経過して新たな場所に脳転移を来しても、再度ガンマナイフ治療を行うことができます。当クリニックでは腫瘍個数が多くても、患者さまのご希望があれば、ガンマナイフで治療を行っていく場合もあります。ご相談ください。
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治療前:肺癌の転移性脳腫瘍です
小さな転移ですが周囲に脳浮腫があります
右片麻痺、失語がありました
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1ヶ月後:著明に縮小しています
脳浮腫も改善しています
症状は完全に軽快しました
2.脳動静脈奇形
これまでおよそ500例のガンマナイフ治療経験があります。脳動静脈奇形を放置しますと1年間に2-3%の確率で頭蓋内に出血を来たします。この出血により、後遺症を残したり、最悪の場合は死亡するなどの原因になります。脳動静脈奇形に対するガンマナイフ治療の目的は異常な血管を閉塞させ、将来おこるかもしれない出血することを防ぐためです。十分な放射線(18-20グレイ)を脳動静脈奇形にあてることができれば、3年かかりますが、一般に80-90%の確率で完全に閉塞します。完全に閉塞すれば、出血の危険はなくなりますが、それまでは出血の危険があります(出血の可能性はガンマナイフ治療をしない場合より低くなると推定されています)。大きさの限界はやはり2.5-3.0cmで、2cm以下が理想的です。
脳動静脈奇形を流れる血液量が多い場合や、大きさが3cm以上の場合、あるいは動脈瘤を合併する場合などは、ガンマナイフ治療に前後して、血管の中から詰める処置(塞栓術)の併用をお勧めします。その際には、患者さまの住居地域に応じて経験豊かな信頼できる血管内治療の専門医をご紹介いたします。
また、初回のガンマナイフ治療で脳動静脈奇形が残存していても、ある程度縮小していればもう一度ガンマナイフで残存部分に照射し完治することも可能です。ガンマナイフ治療は脳動静脈奇形を閉塞させるのが目的で、必ずしも症状の軽快にむすびつくものではありません。また、治癒するまでの期間中大きな出血をした場合や、ガンマナイフで効かない場合などは手術が必要になることがあります。
- 治療時:矢印は異常血管を示します
- 3年後:完全に消失しています
3.良性脳腫瘍(聴神経腫瘍、髄膜腫、下垂体神経内分泌腫瘍など)
手術と異なり、良性脳腫瘍に対するガンマナイフ治療は病巣を完全に消失させることを目的にしているわけではありません。新たに神経症状をださずに腫瘍が大きくならなければ治療は成功したといえます。また、すでにある症状の軽快も期待できる場合がありますが、必ずしも軽快に結びつくとは限りません。腫瘍の増大を防ぎ、症状がこれ以上進まないことを目標としています。したがって、基本的に良性の腫瘍と一生共存して生きていくことになります。一般に良性脳腫瘍に対しては、腫瘍の大きさが2.5-3.0cm以下であれば、80~90%以上の非常に高い治療奏功率が報告されています。
3-1.聴神経腫瘍
これまでおよそ1,000例をガンマナイフ治療しました。最大径が2.5cm以下で、何らかの理由(高齢者、全身状態が不良、手術がどうしても納得できない、手術後残存など)や手術の危険が高いと判断された場合が適応になります。ガンマナイフ後、20年間で90%の確率で腫瘍の成長が止まるか、腫瘍は縮小します。現在のガンマナイフ治療が確立されてまだ30年程度しか経過していないため、その後の経過は不明な点もあります。また、数%の方はガンマナイフ治療をしても腫瘍が増大したり(再発)、腫瘍内に内出血したり、のう胞(水がたまること)ができ、脳や神経を圧迫し日常生活を制限するような症状が出現すれば、手術が必要になります。また、治療後、脳内に髄液がたまり(水頭症)、高次脳機能障害・歩行障害・排尿障害などの症状が出現すれば、簡単な手術(脳室腹腔シャント手術)が必要になることがあります。
6-12か月後には一時的に腫瘍が大きくなることが一般的で、その大きくなるスピードや程度によって、聴力低下(1/3が廃絶、1/3が低下、残りの1/3が不変)、顔面神経麻痺(多くは軽度で一時的なものが10%弱、永遠に残ってしまうもの1%未満)、顔面の異常感覚(しびれ)がでることがあります。
他に、極めて稀ですが(数千分の一という確率と予想されています)、放射線が原因で悪性化する、あるいは放射線があたった部分に腫瘍ができる可能性が指摘されています。
3-2.髄膜腫
髄膜腫の治療の第一選択は手術です。何らかの理由で手術が不可能な方や、腫瘍の発生した場所が手術困難な場合にガンマナイフの適応になります。ガンマナイフ治療の目標は、腫瘍の発育を停止させ、これ以上神経症状が進まないこととしています。当クリニックでは1,100例以上のガンマナイフ治療経験がありますが、ガンマナイフ治療後腫瘍の成長が停止する確率は一般に20年間で90%です。手術後の残存腫瘍、手術が難しい頭蓋底(海綿静脈洞部や斜台部など)腫瘍や脳の深部の腫瘍、高齢者や手術に耐えられない患者さまで、腫瘍の最大径が2.5~3cm以下の場合が非常に良い適応です。
その他の良性脳腫瘍(下垂体神経内分泌腫瘍、頭蓋咽頭腫等)や一部の神経膠腫に対しても有効性です。ただし、いずれの場合も視神経・視交叉と腫瘍が離れていることが治療上望ましいです。
特発性三叉神経痛に対しても高い有効率が確認されています。高齢者・全身状態不良な患者さま・手術後再発症例などの三叉神経痛に対して、治療を行っています。これまで約130例を治療し、典型的三叉神経痛に対するガンマナイフ治療の有効率は80%以上が良好です。
治療の副作用
ガンマナイフ治療が無効であった場合、手術など他の治療が必要になることがあります。また、正常な組織にも多少は放射線があたりますので(視神経、視交叉、視索、聴神経、顔面神経、それらの部分に)、放射線の障害がおこる可能性があります。副作用は個人差もありますが、病巣の部位(脳幹、大脳基底核や視神経や聴神経顔面神経近傍など)、病巣が大きい場合、病巣の数が多い場合、強い放射線を照射した場合、以前に脳に放射線治療を受けた人などにおこりやすいことが知られています。
副作用のうち、最も頻度が多いのが脳のむくみ(脳浮腫)です。MRIで鋭敏に観察されますが、多くは無症状です。しかし、症状があるようでしたらステロイドの内服が必要になります。また、不可逆的に脳が傷むこと(放射線壊死)が3%以下におこりえます。この放射線壊死がおこった場合もステロイドの内服あるいは、ステロイドが無効な場合は、手術で切除しなければならなくなることもあります。浮腫や壊死が発生した場合、障害発生部位により症状が異なります。また視神経、聴神経、顔面神経は放射線にぜい弱で許容量以下の線量で治療しますが、時にこれらの神経に影響が出る可能性があります。
他の副作用として、頭皮の近くに病巣があれば、その付近の毛が一時的に抜けることがあります。しかし、一般には数か月後にまた発毛してきます。照射直後は、放射線による副作用はほとんどありません。フレームをはずした直後、ジンジンと頭が痛くなることが多いのですが、鎮痛剤で通常1時間以内に軽快します。 ピンの刺入部位は2-3日程度で洗髪は可能です。もちろん治療翌日から、創部をぬらさなければシャワー、入浴は可能です。
臨床研究へのご協力のお願い
当クリニックは医療の発展に資するため、院内、他の外部医療機関・研究機関と共同で、主に中枢神経領域の疾患を対象とした種々の臨床研究を行っております。その一環として、築地神経科クリニックでは、脳神経外科学会実施するデータベース事業(JND, Japan Neurological Datebase)に登録をしております。詳しくは https://jns-official.jp/public/studyinfo をご覧下さい。本データベース事業への参加を希望しない患者さまは,いつでもお申し出ください。ご理解とご協力のほどをよろしくお願い致します。なお当クリニックは、患者様の個人情報保護に関して法令を遵守した運用をしております。当クリニックのプライバシーポリシーについてご質問がある患者さまは,担当医師にご質問ください。

